日本ペインクリニック学会誌
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アミトリプチリンとカルバマゼピンの投与によって再発した血乳び尿の1症例
水野 樹杉本 清治飯山 達雄渡邊 裕修町田 健一
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2001 年 8 巻 1 号 p. 18-21

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抄録

症例は, かつてのフィラリア症好発地域であった高知県在住の64歳, 男性. 29歳時にフィラリア症による乳び尿, 59歳時, 63歳時に血乳び尿の既往がある. 今回, 左第4頸神経領域の帯状疱疹の発作痛に対して, 近医で, 抗ウイルス薬, 消炎鎮痛薬, アミトリプチリン75mg/日の投与を受けたが発作痛は軽減しなかった. 当院ペインクリンニック科で, 星状神経節ブロック, 持続頸部硬膜外ブロックの施行に加え, カルバマゼピン400mg/日の投与を開始した. 以後, 発作痛は1日の発生回数, 1回当たりの強さ, 持続時間ともに軽減し消失した. 入院5日目, 突然, 排尿困難, 尿閉をきたし, 導尿により多数の白色ゼラチン状物質と凝血塊を含む混濁した血乳び尿を認めた. 尿道カテーテルを留置したが, 血乳び尿により閉塞, 再留置を繰り返した. アミトリプチリンとカルバマゼピンの投与を中止し, 徐々に血乳び尿は軽快した. フィラリアは, すでに日本では撲滅したとされるが, その晩期症状として乳び尿がある. フィラリア性血乳び尿は, バンクロフト糸状虫の寄生によりリンパ管の圧迫, 閉塞をきたし, 腎周囲のリンパ管と尿路の瘻孔により生じる. フィラリア症既往に対するアミトリプチリンやカルバマゼピンなどの抗コリン薬の投与は, 血乳び尿の発生の可能性があり注意を要する.

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