日本ペインクリニック学会誌
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硬膜外ブロックの効果: 虚血心筋の回復
原 哲也趙 成三冨安 志郎澄川 耕二
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2002 年 9 巻 4 号 p. 376-380

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抄録

急性心筋梗塞に対する再灌流療法の進歩に伴い, 虚血後再灌流に伴う再灌流障害が問題となつている. 短時間の虚血後に再灌流された心筋において非可逆的障害がなく, 冠血流も正常またはほぼ正常に回復しているにもかかわらず, 機械的収縮機能低下が遷延している状態を心筋スタニングという. 胸部硬膜外麻酔 (TEA) は虚血前の心内膜下血流を増加させ, 再灌流後の左室の機能的な回復を促進する. この機序として, 交感神経系の過剰興奮の抑制による心内膜下血流の改善, 心筋酸素消費量の減少などが推察されているが詳細は不明である. われわれはTEAの抗虚血作用とノルエピネフリン (NE) 濃度の関係について実験を行い, TEAによる心筋スタニングの軽減効果がNE投与により失われることを確認した. セボフルラン麻酔下ではTEA施行群も非施行群も, ともに心筋スタニングが軽減される一方, プロポフォール麻酔下ではTEA施行群と非施行群とで心筋収縮能の回復に差がない. TEAの心筋虚血再灌流障害に対する保護作用は, ともに使用される全身麻酔薬の影響を受けるが, 心筋虚血のリスクが増加する周術期において, 安定した冠循環および局所心筋灌流を維持するために有用である.

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© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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