日本ペインクリニック学会誌
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Neuropathic pain: 病態と薬理学的アプローチニューロパシックペインとNSAIDsの関わり
プロスタグランジンの痛覚過敏作用を中心に
細川 豊史
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2002 年 9 巻 4 号 p. 386-390

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抄録

NSAIDsは術後痛や外傷などの急性痛に頻用される鎮痛薬である. その機序は, 痛み・炎症を惹起するプロスタグランジン(PG)の合成酵素であるシクロオキシゲナーゼの活性を阻害し, PGの合成を抑制することにあるとされている. 最近ニューロパシックペインの発現にPGが深く関与していることが明らかになってきた. その機序は, まず末梢作用としてPGの直接的な知覚神経ニューロンの活性化, 機械的化学的刺激に対する神経の感受性を増加させること, また他の刺激に対して知覚神経を感作させること, 脊髄レベルでは後根神経節細胞の脱分極の促進, NMDAレセプターの活性化に引き続く一次求心性ペプチドの分泌促進やNO系の活性化などであるとされる. PGの作用は細胞のPG膜受容体に結合することで発現するが, この膜受容体には多くのサブタイプが存在し, 脊髄痛覚過敏の発現にはEP1が関与していることが分かっている. NSAIDsが抗痛覚過敏作用をもつであろうことは間違いなく, 今後, 脊髄でのPGの作用や痛覚過敏に関与するPGの作用機転についての研究が進むにつれて, NSAIDsがニューロバシックペイン発症予防に用いられることが推測される.

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