精密機械
Print ISSN : 0374-3543
微小径ドリル加工の切残しに及ぼす二,三の影響
菅原 章
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1982 年 48 巻 3 号 p. 329-335

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抄録
微小径ドリルを用いて結晶粒の大きさに違いがある被削材に同じ加工条件で穴あけを行ったときに,そのときの切残しは結晶粒が大きい被削材の方が小さい被削材の穴あけより少なくなる現象がある.この現象を解明する一つの方法として三つの推測をし,これらを実験的に証明する方法により次の結果を得た.
(1) 切残しが生成されやすい面積は微小径ドリルの切込み深さが同じ場合に,加工の対象になっている結晶粒の大きさによって異なり,大きい結晶粒では小さい結晶粒に比べて大きくなる.このとき結晶粒界は塑性変形の拡大を阻止することがすべり線の観察によって確かめられた.
(2) 同じ直径の微小ドリル加工でドリル送りが同じ場合の切削抵抗は,被加工面に含まれて加工の対象になる結晶粒数が多いほど結晶の異方性の影響および被削材の硬度が大きくなるために大きくなる.このとき切残しは結晶粒が比較的大きく,個々の結晶粒界が被加工面の近傍に連続してある場合に,結晶粒界が塑性変形を妨げるために少なくなる.
(3) ドリル1回転あたりの切込み深さが微小である穴あけにおいては,切れ刃稜の微小な凸部がそれぞれ切れ刃となり被削材と摩擦接触や上すべりを起こさないで微小切削が行われるため切残しが小さくなると考えられる.
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© 社団法人 精密工学会
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