精密工学会誌
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切削加工変質層生成過程のシミュレーション解析 (第2報)
残留応力分布への影響因子と応力分布制御の可能性
白樫 高洋帯川 利之笹原 弘之和田 武司
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1993 年 59 巻 12 号 p. 2003-2008

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抄録

本報告では, 前報で示した工作物が加工層内の残留応力分布をFEMシミュレーションにより計算・予測する方法を用いて, 同残留応力に及ぼす影響因子と, 残留応力の制御の可能性について検討し, 以下の結果を得た.
(1) すくい角は大なる程, わずかではあるが加工表面の切削方向の引張残留応力が大となる.
(2) 工具すくい面の摩擦特性値が大なる程, すなわち工具面の平均摩擦係数が小なる程, 加工表面の切削方向の引張残留応力は大となり, これはすくい角が大となるのと同一傾向である.
(3) 工具逃げ面が工作物と接触し, 計算の範囲 (表面の降伏応力以下の応力) の逃げ面応力が作用しても切削状況の変化はほとんどなく, 単に切削力が変化するのみである.
(4) 工具逃げ面に作用する垂直応力は加工表面の切削方向の残留応力を減少させる効果があり, 逆に同摩擦応力はこれを増大させる効果がある.
これらの結果を総合すれば, 機械的原因による残留応力は, 切削油剤や工具刃先形状を工夫することにより, かなりの範囲で制御の可能性があろう.なお切削温度, ひずみ速度の影響については次報以後で検討したい.
本研究の一部は平成3年度文部省科学研究補助 (一般BO3452111) で行われた.

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