静脈経腸栄養
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特集:NST管理栄養士・真の役割は何か
施設における栄養管理は綜合医療の最重要課題の一つである
山本 章塩谷 あけみ森 亜希子内藤 麻美白井 宏明
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2009 年 24 巻 2 号 p. 561-566

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抄録

介護老人保健施設(老健) は本来、病院から家庭生活に戻っての自立を支援する、いわゆる「生活リハビリ」を目的として作られた中間施設である。しかし現実には、介護福祉施設(いわゆる特養) への入所待機中の滞在の場となり、また介護者の負担軽減のために家庭との間を行き来する(在宅介護を支援する) 場となっていることも多い。老健を利用する人は認知症を主として身体活動に大きな異常のない人々から、重度の精神・身体障害のために実質的に寝たきりの人々まで極めて多様であるが、最近は高血圧と糖尿病をリスクファクターとして脳卒中から高次脳機能障害に陥入り、嚥下障害のために胃瘻から栄養補給を受けている人々の入所希望が多くなりつつある。こうした状態は特養も同様であるが、終の棲家に当たる上、看護師の数が少ないために施設への負担はむしろ老健よりも大きい。老健の持つハンディは、医療保険が自由に使えず、医療費が人件費を初めとする諸費用と共に包括払いとなっていることである。そのため、高価な医薬品を使うことが出来ず、チューブ栄養の注入液も食品の範疇に入るものに限られる。したがって、医薬品を自由に使える在宅医療から施設介護に移行する場合にトラブルを起こさないように注意が必要である。特養も老健も医師の往診あるいは数、看護師の数は限られている。介護士の数も充分でなく、しかも自由な医療行為が許されていないので、施設では病院のように充分な医療を提供することが出来ない。華やかに進歩した医療の陰で、自立への復帰から取り残された人々の介護に大きな制約が存在する。唯一つ施設介護で上に挙げた各種の制約を補うものは、全ての職種(医師・看護師・栄養士・介護士・療法士) が一体となってのチーム医療の実行であるが、精神を鼓舞するだけでは十分に実を挙げ得ないことも理解してほしい。

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© 2009 日本静脈経腸栄養学会
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