静脈経腸栄養
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特集
急性呼吸不全の栄養管理
海塚 安郎
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2012 年 27 巻 2 号 p. 671-682

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抄録

急性呼吸不全は肺酸素化障害が主病態であり、原因は細菌性肺炎、誤嚥性肺炎、間質性肺炎、刺激性のガスの吸入、敗血症、多発性外傷、ショックなど数多くあり、それらは肺の直接障害によるものと全身性炎症反応の標的臓器となり発症する場合がある。治療は、原因への治療と呼吸循環をはじめとする全身管理で構成される。侵襲に伴い神経-内分泌-免疫系が賦活され代謝動態は異化亢進となる。さらに呼吸不全では呼吸仕事量の増加、挿管による新たな感染症のリスク、広域抗菌薬使用による正常細菌叢の乱れ、ステロイド使用による高血糖、喀痰力の維持改善の点からも全身管理の一環として代謝・栄養管理が重要であり、早期からの経腸栄養が推奨される。初期投与設定では、熱量は25kcal/kg/日 (20≤BMI≤25) とし、使用する栄養剤は1.5~2.0kcal/mL濃度、タンパク質投与量は1.0-1.2g/kg/日、脂質含量15~30%を基準とし、血糖値は120~160mg/dLとする。炭酸ガス産生抑制が必要な病態では脂質含量を増やす。その後は血液生化学データの推移を確認し電解質および体液の厳密な管理を行い、その上で患者の個別性を反映 (投与熱量、タンパク質量の調節) した栄養管理を行う。ALI/ARDS症例へのn-3系脂肪酸、γリノレン酸、抗酸化物質を強化した栄養剤は現状では「考慮すべき」レベルである。

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© 2012 日本静脈経腸栄養学会
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