静脈経腸栄養
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特集
肝切除と脂肪酸代謝
土師 誠二
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2013 年 28 巻 4 号 p. 923-928

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抄録

ω3系ならびにω6系の多価不飽和脂肪酸 (PUFA) は肝切除に伴う生体反応と密接な関わりを有することが明らかにされている。PUFAの代謝産物であるプロスタノイド (PGE2、PGI2) は肝再生促進作用を有し、ω3系PUFAは実験的にも臨床的にも大量肝切除、肝虚血再還流障害に伴う高サイトカイン血症を制御し、感染性合併症を抑制することが示されている。一方、ω3系PUFAは免疫栄養療法 (immunonutrition) の主要な構成要素として、すでに外科感染症制御効果が確立されている。我々が実施した肝硬変肝癌に対する肝切除例を対象とした無作為比較試験は、術前immunonutritionが炎症反応制御、免疫能維持から感染性合併症を抑制することを明らかにし、この効果には術前に肝組織中EPA/AA比を上昇させておく“metabolic preconditioning”が重要であると考えられた。さらに、主に経腸栄養剤を用いるi mmunonutriti onに加えて、高ω3系PUFA配合脂肪乳剤の静脈投与が肝切除後の感染性合併症を同様に抑制することも報告され、投与経路に関わらずω3系PUFAの有効性が期待出来るものとされ、本邦での臨床使用が待たれる。

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© 2013 日本静脈経腸栄養学会
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