日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
症例報告
Massive perivillous fibrin depositionを呈し,胎児死亡に至るも母体救命しえた妊娠オウム病の1症例
服部 葵吉田 彩奥 楓神谷 亮雄黒田 優美笠松 敦岡田 英孝
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 57 巻 1 号 p. 140-145

詳細
抄録

 オウム病はChlamydia psittaciC.psittaci)による人畜共通感染症で,鳥類から感染する.本疾患はインフルエンザ様症状の軽症例から播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)や多臓器不全の重症例まで多様な症状を示す.今回,オウム病罹患後に敗血症性DICにより胎児死亡に至った妊婦症例を経験したので報告する.

 症例は31歳の3回経産婦の妊婦である.妊娠15週3日,発熱・頭痛・咳嗽を主訴に他医療機関を受診したが,症状が悪化し,妊娠17週2日,髄膜炎疑いで当院に救急搬送された.敗血症性DICを疑い,抗菌薬及び抗DIC治療を開始した.第2病日に胎児死亡を認め,母体は肺水腫による呼吸状態悪化のため,第3病日に気管挿管管理とし,同日陣痛誘発し分娩(死産)した.病原体を特定できず,胎児剖検でも異常は認めなかった.胎盤病理所見で広範囲絨毛周囲フィブリン沈着(Massive perivillous fibrin deposition:MPFD)を認めたことから,ウイルス感染を疑い,国立感染症研究所に精査を依頼した.その結果,C.psittaci DNAが胎盤組織検体のみから検出された.以上より,妊娠オウム病による敗血症性DICでMPFDが起こり,胎盤機能不全から胎児死亡に至った可能性が高い.妊娠中に鳥類やその排泄物への接触をできるだけ避けるよう指導する必要がある.ただし,どの程度の接触が危険かは不明で,今後の研究が待たれる.

著者関連情報
© 2021 日本周産期・新生児医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top