日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
一過性大腿骨頭萎縮症(Transient Osteoporosis of the Hip;TOH)を背景とした妊娠中の大腿骨頸部骨折の一例
若木 優渡邊 佳織太田 邦明鈴木 りか
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2021 年 57 巻 1 号 p. 167-174

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抄録

 一過性大腿骨頭萎縮症(Transient Osteoporosis of the Hip;TOH)は股関節に疼痛を伴う骨萎縮を生じるが,負荷を避けて安静を保つことで自然軽快することが多い運動器疾患である.妊娠39週に股関節痛を生じた後経腟分娩,分娩後に大腿骨骨折が判明し,TOHを背景とすると診断された症例を経験した.TOHは中高年男性と妊娠後期女性に多く,診断にはMRIが有用,原因は骨盤静脈圧迫説,閉鎖神経圧迫説,Sudeck骨萎縮説などがいわれているが,どれも決定的ではない.1990年から2019年までの医学中央雑誌の検索にて,55症例の妊娠中のTOHを確認した.発症時期は妊娠第3三半期が最も多く,これまでの報告例と一致した.病側は右側が多く,従来左側に多いとされている報告とは異なる結果であった.TOHは保存的治療のみで予後良好な疾患であるが,他の合併症があると骨折の頻度が高くなる.妊娠中の股関節痛,浮腫等を認める場合は本疾患を疑うことが早期診断と予後向上につながる.

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© 2021 日本周産期・新生児医学会
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