2022 年 58 巻 2 号 p. 273-277
プロテインS欠乏症は先天性血栓性素因のひとつで,その頻度は本邦における先天性血栓性素因の中では最も高い.血栓症以外の周産期合併症に遭遇することも少なくはない.2014年1月から2019年12月までに当科で分娩管理を行ったプロテインS欠乏症合併妊娠の7例について検討した.既往妊娠合併症として,人工妊娠中絶術後の下肢静脈血栓症を1例認めた.妊娠合併症は胎児発育不全1例,妊娠高血圧腎症1例,妊娠糖尿病2例であった.早産は2例であった.5例は児の血液検査を行い,2例はプロテインS欠乏症と診断した.妊娠中に血栓症を発症した例は1例で,産褥期に血栓症を認めた例はなく,出血性合併症を2例認めた.プロテインS欠乏症合併妊娠は,下肢静脈血栓症だけでなく子宮内胎児死亡や胎児発育不全,妊娠高血圧腎症といった周産期合併症に注意して管理する必要がある.