日本周産期・新生児医学会雑誌
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母子感染
谷村 憲司
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2023 年 59 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

 本稿ではTORCH症候群に含まれる病原体のうち,トキソプラズマ,サイトメガロウイルス(CMV),梅毒に焦点を当て,妊婦やそのカップルに対するカウンセリングの進め方などについて解説する.

 ①先天性トキソプラズマ症:妊娠中の初感染からしか発生しないと考えてよく,トキソプラズマ-IgG,IgM,IgG avidity検査によって感染成立時期を推定する.初感染疑い妊婦にはスピラマイシンを投与し,胎児感染を予防する.出生前診断には羊水中トキソプラズマ-DNA PCR検査が利用できる.出生児の先天性感染の診断は難しい場合がある.

 ②先天性サイトメガロウイルス感染症(cCMV):妊娠中の初感染と非初感染のいずれからも発生しうるので血清学的検査による妊婦スクリーニングでは見落としが生じうる.出生前診断には羊水中CMV-DNA PCR検査が利用できる.症候性cCMVに対するエビデンスのある胎児治療はないが,バルガンシクロビルを用いた新生児治療は近い将来,日本で保険適用となる予定である.

 ③先天梅毒:近年,梅毒患者が増加しており,それに伴い,妊娠期梅毒も増加している.抗菌剤投与で先天性梅毒の発生を防ぐことができるので,血清学的検査による妊娠初期の妊婦スクリーニングは重要である.日本でも持続性ペニシリンの筋注製剤が使用可能になった.

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