日本小児外科学会雑誌
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Meconium Ileus without Mucoviscidosis の壁内神経叢についての病理組織学的研究
富本 喜文
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1993 年 29 巻 1 号 p. 58-68

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抄録

cystic fibrosis を伴わない meconium ileus すなわち meconium ileus without mucoviscidosis (以下,本症)の病因については現在までに種々の説が述べられてきたがいまだ明かではない.本研究では腸管壁内神経系に着目し,本症8例での神経細胞を病理組織学的,細胞計測学的に検索,対照としてヒト胎児15週より成人にいたる回腸での壁内神経系の発達過程との比較を行い以下の結果を得た.本症と正常対照例との腸管壁内神経叢内の細胞細胞の数での比較では差異は認めなかったが,個々の神経細胞核の面積での比較では新生児の対照例(41.35 ± 5.51μm^2)にくらべ,本症では著しく小型(20.64 ± 3.22〜29.14 ± 6.44μm^2)で対照例での胎生5〜6ヶ月程度の大きさにすぎず神経細胞の未熟性が示唆された.2〜3ケ月後の腸瘻閉鎖時に採取した同一症例での腸管との比較では,閉鎖時には症状の改善とともに神経細胞核面積の増大(34.52 ± 4.12〜42.56 ± 10.04μm^2)がみられ,本症では腸管壁内神経細胞の経時的な成熟化が認められた.以上の結果より本症での腸閉塞の病態は端管の壁内神経細胞の未熟性に起因する新生児機能的腸疾患で,一般に予後は良好な経過を示し, immaturity of ganglia として独立した disease entity として取り扱うことを提唱したい.

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© 1993 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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