日本小児外科学会雑誌
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先天性胆道閉鎖症 I cyst 型に肝細胞癌を合併した1例
田村 元秦 温信佐々木 文章高橋 弘昌浜田 弘巳内野 純一中沢 修美馬 聡昭安念 和哉藤岡 保範
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1993 年 29 巻 1 号 p. 131-135

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抄録

胆道閉鎖症(CBA)と肝細胞癌(HCC)の合併は,まれではあるが最近報告例が増えている.最近我々は I-cyst 型 CBA と思われる例に HCC を合併した症例を経験した.症例は○只○樹16歳女性. CBA の診断にて生後約140日目拡張総胆管空腸吻合術を施行した. 術中胆道造影では肝内胆管の発育は割合良好であったが,左枝の壁に不整が認められ,十二指腸へは排泄されなかった.術中肝生検で胆汁鬱滞性の肝線維症が認められた. 術後は減黄良好で無症状であった. 16歳時,発熱,上腹部痛出現. AFP (<50,000ng/ml), CEA (14ng/ml)は高値を示し, CT,エコー,血管造形にて肝外側区に7cmの乏血管性の腫瘤を認めた. 針生検にて高分化型の HCC と診断された. 5'FUDR を投与したが,発症5ヵ月後 DIC にて死亡した.本症は HCC の合併まで黄疸を認めなかった初めての症例と思われた. CBA 術後は HCC の合併も念頭におき注意深い観察が必要である.

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© 1993 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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