1993 年 29 巻 1 号 p. 136-142
X 線写真にて胸腔内に腎陰影が認められる場合,胸部腎と呼ぶ.われわれは,先天性奇形に合併した2例を経験したので報告する.症例1:生後1日右横隔膜ヘルニアの手術を施行した.有嚢性で肝右葉と十二指腸より横行結腸までの消化管が脱出し,整復後縫合閉鎖した.6歳時,胸部 X 線写真にて右横隔膜上に胸腔に突出する腫瘤陰影が認められた. IP, CT, エコー検査, MRI にて,右胸部腎と診断した.腎機能異常は認めなかった.症例2:生直後臍帯ヘルニアが認められ,脱出した肝臓と小腸を整復して一期的に閉腹した.生後7か月, ASD および VSD の根治術を目的に入院した際の胸部 X 線写真にて右横隔膜直上に胸腔に突出する腫瘤陰影を認めた.エコー検査, IP, CT, MRI にて右胸部腎と診断した.腎機能異常は認めなかった.本症は一般に,腎機能異常を伴う以外手術療法を必要とせず,侵襲的な検査を行うべきでない.