1993 年 29 巻 1 号 p. 143-147
症例は5歳の男児.腹痛・嘔吐を主訴に当科を受診. 腹部全体の圧痛・腹壁緊張亢進を認め,左肋骨弓下に可動性のある超手拳大の硬い腫瘤を触知.超音波・遺影 CT・肝脾スキャンの所見から遊走牌茎捻転と診断. 超音波カラードプラ法にて, 脾門部での遠肝性脾動脈血流と求肝性脾静脈血流がリアルタイムに確認され,未だ脾壊死には陥っていないものと判定し,脾温存の方針で緊急手術を施行. 脾は固定収帯が欠損し,充血腫大と背側部の色調不良を認め,時計方向に720°捻転していたが,これを解除すると,充血・色調不良が軽減し,脾門部での脾動脈拍動が改善したため脾縫合固定術を施行. 術後2年を経過した現在再発は無く経過順調である. 脾の血行動態解析手段として超音波カラードプラ法は非常に有用であると思われた.