1993 年 29 巻 4 号 p. 775-782
我々の施設では1988年以来,新生児・乳幼児の気道病変に対して,細径ファイバースコープを用いた気管支鏡検査を行ってきた.今回,我々の気管支鏡検査の経験を報告するとともに,細径ファイバースコープを用いた新生児・乳幼児の気管支鏡検査の意義と問題点について考察を行った. 1988年10月から1992年5月までの3年7ヶ月間に,2歳未満の60例(うち新生児34例)に対して320件の細径ファイバースコープによる気管支鏡検査を施行した.細径ファイバースコープは外径1.8mm先端非弯曲型(FUJINON社製 PF18),および外径2.2mm先端音曲型(OLYMPUS社製 XBF N20-prtotype)を用いた.検査の施行場所は270件がベッドサイド,43件が手術室,7件が外来診察室であった.主な検査の適応は,新生児例では気道の形態異常の精査(47件)や換気不全の原因検索(25件)であった.また,乳幼児例では気道術後の経過観察(119件)や換気障害の精査(47件)であった.検査により多数の気道の形態異常や換気障害の原因が診断された.また,検査による出血や気道損傷などの重篤な偶発症は認められなかった.細径ファイバースコープによる気管支鏡検査には数多くの長所が認められ,新生児・乳幼児の気道病変の診断や,重症呼吸管理症例の治療に今後一層幅広く利用されるものと思われた.