1993 年 29 巻 4 号 p. 823-830
喉頭軟化症では,喉頭の組織が脆弱であるため,吸気時喉頭蓋や披裂喉頭蓋ヒダおよびアリテノイドなどが内側に偏位する.その機序については現在もなお不明な点が多い.本症の診断は内視鏡検査による吸気時喉頭部気道狭窄所見よりなされる.喉頭軟化症21例のうち retrospective に検討し得た16例,および対照症例として呼吸障害のない他疾患患児15例の喉頭内視鏡検査時の画像を検討し,喉頭の形態の類型化および吸気時気道狭窄の定量化をおこなった.1)喉頭の形態:喉頭蓋は, Fragile 型と Firm 型の2型に分類された.喉頭軟化症例の12例および対照症例の2例では Fragile 型であった.披裂喉頭蓋ヒダは, Arytenoid 型と Tubelculum 型の2型に分類された.喉頭軟化症例の13例および対照症例の10例では Arytenoid 型であった.喉頭軟化症例では Fragile 型およびArytenoid 型が多く認められた.2)吸気時喉頭部気道狭窄の定量化:喉頭蓋左右起始部間の距離(a)と,披裂間切痕よりこれに直交する距離(b)とから喉頭部気道面積(a×b)を設定算出し,この面積の呼気時に対する吸気時の比(以下I/E Index)を求めた. I/E Index は,本症例では0.191±0.145 (I/E Index<1) であり,対照症例では3.080±2.138 (I/E lndex>1)であった. I/E Index により喉頭軟化症の定量的な診断が可能であった.