1993 年 29 巻 4 号 p. 886-893
Pulmonary artery sling を合併した広範囲先天性気管狭窄症は稀な疾患であり, その予後は不良である.最近我々は2例の本症を経験し,1例を救命し得た.症例1は鎖肛に対する人工肛門作成術後より呼吸困難を来たした日齢0の女児.心房中隔欠損症および動脈管開存症を合併した本症と診断し,人工心肺下にこれら疾患の一期的根治術を施行した.術後6日目より呼吸循環不全の状態に陥り, extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)を開始したが,多臓器不全となり術後11日目に死亡した.症例2は反復する呼吸困難のため当科に入院した生後6ヶ月の女児.動脈管開存症を合併した本症と診断し, ECMO施行下に一期的根治術を行った.術後の経過は良好で,2年8ヶ月後の現在も呼吸器症状を認めていない.症例報告に加えて,本症の診断および術中術後管理を中心として文献的考察を行った.