日本小児外科学会雑誌
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Etoposide により抑制された神経芽腫肝転移に対する顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF) の影響
山崎 洋次吉澤 穣治安川 繁博吉田 和彦桜井 健司
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キーワード: 神経芽腫, 肝転移, G-CSF
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1994 年 30 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

マウス神経芽腫 C-1300 を A/J マウスの脾臓内に移植して肝転移モデルを作成した. この神経芽腫肝転移モデルを用いて以下の4群からなる実験を行った. 第1群 : 生理食塩水を0.1ml 腹腔内に連日7日間投与し,10日目に屠殺した. 第2群 : Etoposide,2 mg/kg/day を連日7日間投与して,10日目に屠殺した. 第3群 : Etoposide,2 mg/kg/day を連日7日間投与して,10日目に生理食塩水0.1ml を浸透圧ポンプを用いて7日間皮下投与し,18日目に屠殺した. 第4群 : 第3群で投与された生理食塩水の代わりに遺伝子組換えヒト顆粒球コロニー刺激因子 (rhG-CSF) を60μg/kg 投与した. その結果第2群においては組織学的にも明らかに肝転移が抑制されていたが,rhG-CSF を投与した第4群において,とくに肝転移の増幅は認められなかった. また各群の肝重量は第1群,3.3±1.04g,第2群,1.2±0.23g,第3群,5.9±0.64g,第4群,5.6±0.75g であり,第1群と第2群の間に統計学的有意差が認められた (p=0.0017). 第3群と第4群との間には,有意差はみられなかった (p=0.334). 従ってマウス神経芽腫肝転移モデルでみるかぎり,rhG-CSF は化学療法後の肝転移巣を増殖させる作用はないので,抗悪性腫瘍薬の副作用である骨髄抑制を軽減させる薬物として安全に使用できる.

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© 1994 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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