1994 年 30 巻 1 号 p. 43-49
肝臓移植待機中の小児の胆汁鬱滞性肝疾患における ursodeoxycholic acid (UDCA) の有用性を知るために,2重盲験法を用いたプラセボ・試験薬交差法による検討を行なった. 対象は Royal Children's Hospital,Brisbane で管理されている14例 (胆道閉鎖症6例,Alagille 症候群5例,alpha 1-antitrypsin欠損症2例,胆管低形成症候群1例) で,年齢は0.6〜14歳 (中央値4.2歳) である. UDCA は12.5〜24.4mg/kg を経口投与した. 評価はかゆみスコア,身体計測,total body potassium (TBK),標準的肝機能検査,monoethylglycinexylidede (MEGX) 形成試験により行なった. UDCA 群と Placebo 群は8週間の試験投与の後交差した. その結果,UDCA によりかゆみスコア,栄養状態,標準的肝機能検査の改善は認められなかったが,MEGX の30分値は有意に改善された (UDCA vs Placebo ; 17.1±25.3ng/ml vs -5.3±13.4ng/ml,P < 0.05). MEGX の結果は肝ミクロゾーム機能の改善という意味からは好ましい効果であるが,少なくとも8週間の UDCA 投与では肝移植適応患児の栄養状態や標準的肝機能検査に現われる肝機能の改善は認められなかった. 今後患者を選び,より長期の投与の検討を行なう必要がある.