1994 年 30 巻 1 号 p. 132-138
小児で1ヵ月以上の長期にわたり食道内に停滞した食道異物 (以下,陳旧性食道異物) は本邦では16例の報告がある. 症例は X 線透過性のプラスチック製玩具がほぼ2年間嵌入し縦隔腫瘤を形成して食道狭窄を来たした陳旧性食道異物の3歳児. 主症状は嘔吐で咳嗽・喘鳴を伴った. 体重増加不良と軽度貧血あり. CT・MRI 検査によりこの異物の介在部位および性状が明かとなり,異物穿孔により食道周囲に形成された炎症性腫瘤と診断して手術施行. 右第4肋間開胸,食道左側壁の癒着が強固で全周剥離は不可能,右側壁に縦切開を加え肉芽に埋没した19mm 大のプラスチック製吸盤を摘出. 術後食道造形・CT 検査では異物嵌入跡の食道壁は極めて不整であったが,徐々に固形物摂取が可能となった.