1994 年 30 巻 4 号 p. 749-754
ヨード負荷による一過性甲状腺機能低下症の2新生児外科症例を経験した. 症例1は妊娠33週に羊水胎児造影を受けた先天性十二指腸閉鎖症の女児で, 16生日のスクリーニングで発見, L-サイロキシン投与で治癒した. 症例2は在胎33週3日, 出生体重1453gの女児. 人工膜利用臍帯ヘルニアの治療中に用いたポビドンヨード液で本症を併発した. 消毒剤変更2週後には甲状腺機能は正常化した. 新生児外科症例では, 造影やヨード含有消毒剤によるヨード負荷の機会が多く, 甲状腺機能への影響を考慮しなければならない. その使用を極力制限して予防につとめるとともに, 尿中ヨード排泄量測定や定期的なスクリーニングの実施による早期発見, L-サイロキシン補充療法による早期治療が可能であり, 本症による胎児・新生児の成長・発達障害は未然に防ぐべきである.