1994 年 30 巻 4 号 p. 777-781
直腸狭窄は Stephens らの直腸肛門奇形の分類で中間位型の一型とされているが, 治療においてどの術式が最も適当かについて未だ一定の見解がなされていない. 症例は, 10ケ月男児で腹部膨満と排便障害を主訴に紹介された. 精査の結果, いわゆる H 型直腸尿道瘻を合併した anorectal stenosis と診断した. 人工肛門造設後に posterior sagittal approach にて尿道瘻閉鎖, 直腸狭窄部切除, 直腸 pull through による肛門形成術を行って治療し, 満足できる結果を得た. 術後2年6ケ月現在, 排便状態は良好で失禁, 汚染は認めず, 時々, 緩下剤投与にて排便のコントロールを行っている. 本例のように, 瘻孔を有する直腸狭窄の外科治療では, 広い視野の得られる posterior sagittal approach が有用であった.