1994 年 30 巻 6 号 p. 1128-1132
空腸結膜下の動脈瘤破裂により,大量の消化管出血をきたした小児例を経験した.症例は14歳の男児であり,突然に出現した大量下血によりショックとなり近医に入院し,赤血球濃厚液約400ml等の投与により回復した.当院転院後に内視鏡検査を行ったところ,十二指腸球部前壁にびらんを認めたため,出血源と判断し,シメチジン投与により保存的に治療を行っていたが,再び大量の下血が出現し,緊急開腹術を行った.出血源はトライツ靭帯より約120cm肛門側に存在した, 1.4×1.0×0.8cmの腫瘤であり,術後の病理組織学的検索にて空腸粘膜下にみられた動脈瘤破裂と診断された.小腸粘膜下の動脈瘤破裂の報告は稀であり,粘膜下の異常拡張動脈として報告された例をあわせても,自験例を含め17例の報告がみられるにすぎない.本症は平均年齢24.4歳と若年者に多くみられるが,小児例は自験例を含めて2例のみであった.