1994 年 30 巻 7 号 p. 1310-1316
心房臓器錯位症候群 (無脾症候群) に合併した食道裂孔ヘルニアの2例を経験した. 症例1では複雑心奇形にも関わらず,嘔吐,体重増加不良等の原因が食道裂孔ヘルニアによる GER に起因すると考えられるため,外科的治療を施行した. 症例2では消化器症状が全く認められない比較的大きい滑脱型の食道裂孔ヘルニアがあるが複雑心奇形の治療を優先し,食道裂孔ヘルニアは保存的に経過を観察した. 心房臓器錯位症候群 (無脾症候群) と食道裂孔ヘルニアの合併症例における食道裂孔ヘルニア術後の予後は極めて悪いため,治療では,合併する複雑心奇形及び免疫不全状態を考慮し過大侵襲は避けるべきで個々の症例に応じた柔軟な治療法の選択が重要であると考えられる.