1995 年 31 巻 1 号 p. 36-41
症例は5歳男児で,尿路感染症を機に腎杯憩室が発見された.既往歴に乳児期の反復性尿路感染症があり,腎エコーや排泄性尿路造影を繰り返し施行されていたが,異常所見はなく,腎杯憩室も認められなかった.腎杯憩室は,腎孟尿管系の発生異常とする先天性説が有力視されているが,本症例では,乳児期には認められなかった腎杯憩室が,5歳になって出現しており,後天的発生が示唆された.現在,腎エコー,排泄性尿路造影で経過を観察中であるが,腎杯憩室の大きさと形態は6か月を経過しても変化していない.腎杯憩室が後天的に発症した報告はなく,腎杯憩室の自然経過を観察した報告も少ない.この症例は,腎杯憩室の成因を究明する上で興味ある症例と考えられる.