日本小児外科学会雑誌
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高位および中間位直腸肛門奇形に対する内肛門括約筋温存手術
大浜 和憲大澤 武矢崎 潮亀水 忠塚原 雄器
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1995 年 31 巻 4 号 p. 597-608

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抄録

最近,高位および中間位直腸肛門奇形においても直腸末端部には内肛門括約筋に類似した平滑筋の肥厚が存在し,しかもこの部位は内肛門括約筋機能を有していることが明らかにされてきた. 今回,私たちは高位型5例,中間位型4例に対して直腸末端部を温存し利用する内肛門括約筋温存手術を行い,術後排便機能を臨床評価,肛門内圧検査とMRI検査(Magnetic Resonance Imaging)を用いて評価した. 内肛門括約筋温存手術とは直腸末端部をできるだけ末梢側で切断し,電気刺激を用いて正確に恥骨直腸筋の前方そして外肛門括約筋の中央を貫いて引きおろす術式であり,手術は生後5ヵ月から18ヵ月(平均10ヵ月)の間に行い,経過観察期間は10ヵ月から6年6ヵ月(平均4年0ヵ月)であった. 4歳以上の7例に対して臨床的排便機能評価を行い,高位例では7点が1例,5点か2例,4点が1例で,中間位では3例とも7点であった,肛門内圧検査では高位型5例の直腸静止圧は平均14cmH_2O,肛門管静止圧は平均66.4cmH_2Oで,中間位型4例の直腸静止圧は平均11cmH_2O, 肛門管静止圧は平均64.5cmH_2Oであり,高位例および中同位例ともに正常範囲内であった.直腸肛門反射は9例中7例で陽性であり, 肛門管律動波は全例に認められた. MRI 検査では高位型の1例を除く8例で肛門管は骨盤底筋群のほぼ中央を貫いていた. 高位型の5例中3例で筋束の菲薄化が認められ,2例で肛門管周囲に脂肪組織が存在していた. 中間位型4例とも筋束は厚く, 肛門管の周囲に脂肪組織はなかった. 以上の結果より内肛門括約筋温存手術の有用性が確認された.

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