1995 年 31 巻 4 号 p. 627-632
乳児肝血管内皮腫の一症例を経験したので報告した. 症例は4ケ月女児. 38度の発熱を主訴に近医受診し, 腹部腫瘤を指摘され, 当科に入院となる. 入院時現症は肝を心窩部に4横指触知するほか, 特記すべき事項を認めなかった. 超音波及びカラードプラー法, CT, MRI, 血管遺影にて肝血管内皮腫を疑い, 肝左葉切除術を施行した. 病理診断は肝血管内皮腫であった. 本疾患の画像診断は血管造影が特徴的とされてきたが, 超音波カラードプラー法, MRI の報告も散見され, 所見を比較検討した. 現在, 本疾患の治療は大きく外科的治療と保存的治療に分けられ, その選択に関しては議論の多い所である. 本症例では稀に悪性例の報告もみられることや, 腫瘍が孤立塊状で肝左葉に限局していて手術的摘出が容易であったことなどから外科的切除術を選択した.