1996 年 32 巻 2 号 p. 305-310
尿管弁は稀な疾患であり,本邦報告例は1994年末までに自験例を含めて35例に過ぎず,小児例では本邦14例目になる.今回私共は14歳男児の尿管弁を経験した.主訴は左側腹部痛.術前診断は腎孟尿管移行部狭窄による左水腎症.手術により左腎孟尿管移行部に,漏斗状で中央に小さい開口部を有する尿管弁を認め切除した.本症は文献的には大部分の症例が手術時または剖検時に診断されている.しかし最近術前診断が得られ,治療も内視鏡的に非侵襲的に治療された報告も散見される.上部尿路通過障害の一因として本症を念頭に置き,術前診断の確定に努める事が重要である.