日本小児外科学会雑誌
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腐食性結腸炎の瘢痕狭窄により腸切除を必要とした被虐待児症候群の1乳児例
高橋 篤松山 四郎鈴木 則夫黒岩 実池田 均小泉 武宣清水 信三川島 佐枝子
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1996 年 32 巻 4 号 p. 732-736

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抄録

特殊な虐待形態の被虐待児症候群の一乳児例を経験した. 症例は在胎34週, 出生体重2504g, Apgar S. 2点 (1分)・4点 (5分) で出生した男児. 分娩遷延による胎児・新生児重症仮死から低酸素性虚血性脳症を来して当院外来にて経過観察中であった. 生後5ヵ月, 発熱・嘔吐・腹部膨満を呈し, 腸炎疑いで当科入院となった. 症状発生3日後に母親が虐待の事実を告白して診断が確立した. 虐待形態は強酸性洗浄剤の注腸という特殊なもので, 結腸に進行性の腐食性瘢痕狭窄が生じた. 2ヵ月後に狭窄結腸を切除し消化管を再建した. 虐待要因は児の低酸素性虚血性脳症, 母親の神経症, 育児ノイローゼと推測された. 再発防止策として, 母親の神経症とストレスに対する精神科治療, 家族に対して母親のストレスを軽減する指導などを行った. 術後1年6ヵ月母親が児を養育しているか, 現在のところ再発はない.

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© 1996 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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