日本小児外科学会雑誌
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Hirschsprung 病の診断と治療の変遷 : 全国アンケート調査より
水田 祥代田口 智章上村 哲郎山田 耕治
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1996 年 32 巻 6 号 p. 952-965

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抄録

Hirschsprung 病の診断と治療の本邦における現状を知る目的で,日本全国主要小児外科208施設に1988年から1992年までの5年間の症例のアンケート調査を依頼し,146施設 (70.2%) から回答をいただき,1121例の症例を集計することができたので,10年前の前回の調査結果と比較検討した.発生頻度は1/5544でやや減少傾向にあったが,性別,出生体重,家族発生率,無神経節領域の頻度は前回とほぼ同じであった.他の奇形の合併率は16.3%で前回 (11.1%) より増加し,とくにダウン症,心奇形の合併が増加した.診断は新生児期につけられたものが多くなり,その方法はコリンエステラーゼ染色の普及が著明であった.根治術前の腸炎発生率は前回と変わらず高率 (29.1%) であったが,腸炎による死亡率は著明に減少した.根治術式は Duhamel 法 (Z 型吻合術その他の変法を含む) が最も多く68.5%で前回より増加していたが, Soave 法は20.6%と減少し,Swenson 法は6.4%と前回とほぼ同じであった.なお GIA の使用が著明に増加しており,全手術例の44.0%に使用されていた.術後腸炎の発生率は16.8%であった.死亡率は4.9%で前回 (7,1%) に比べ減少したが,その死因は前回と同様,腸炎による敗血症が主なものであった.全結腸以上に及ぶ症例は,全体に占める割合はやや増加したが,発生率は10年前とほぼ同様であった.全結腸型の治療成績は著明な改善をみたが,小腸型,とくに Treiz band より70cm をこえる症例では死亡率が高く今後の課題である.根治術式としては右結腸パッチを用いた術式が増加傾向にあった.

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