1996 年 32 巻 7 号 p. 1110-1114
仙骨部脊髄々膜瘤術後の患児は,膀胱直腸障害や肛門・会陰部皮膚の無知覚域を持つことが多い.その為,排便管理の遅れがしばしば認められる.排便管理を改善する目的で,肛門周囲無知覚域を持つ一小児例に知覚皮弁を移植したので報告する.右大腿後面で幅8cm,長さ20cm の U 字型の inferior gluteal thigh flap を作成した.この知覚皮弁は下臀動脈下行枝と後大腿皮神経により支持される.肛門縁の3分の2の皮膚を切除し,皮弁を肛門に縫着した.術後,皮弁に痛覚,触覚が保持された.血行も良く皮弁の色調に問題はない.肛門周囲に知覚域が作成され,排便管理がより容易になると考えられた.