1997 年 33 巻 1 号 p. 91-95
われわれは声門下狭窄症に対する治療法として血行を保持した状態で移植でき,しかも手術手技が容易である術式が適当と考え,胸骨舌骨筋を茎とした舌骨の利用を試みた.手術術式は,一側の胸骨舌骨筋以外の付着筋を舌骨から切離,胸骨舌骨筋を茎とした舌骨による移植片を作製し,切開した狭窄部前壁に縫合するものである.後天性声門下狭窄症の4歳,男児に本術式を施行した.術後,肉芽形成のため Tチューブを留置したが,10ヵ月後の気管支鏡にて肉芽消失を確認しチューブを抜去した、本術式の利点は 1.移植片への血流保持により感染の危険性が少ない.2.筋の付着による移植片の安定性が得られる、3.手術手技が比較的容易、4.ひとつの手術創で可能.5.喉頭の正常な発達が期待できることなどである.本術式は術後重篤な合併症もなく内腔拡大効果は良好であり,安全かつ効果的な術式と思われた.