1997 年 33 巻 5 号 p. 815-821
呼吸困難を主訴とした5ヵ月男児の胸壁過誤腫の1例を経験したので報告する.胸部X線上,左胸腔の大部分を占拠する石灰化を伴う腫瘍を認めた.CTでは左第3,4肋骨背側から発生した内部構造不均一の腫瘍を認めた.手術により直径6.5 cmの被膜に覆われた腫瘍と第3,4肋骨の背側部を一塊として摘出した.胸壁再建は不要だった.病理組織検査で肉芽腫様線維組織,多量の血液を含んだ瘤状骨嚢腫様部,硝子軟骨,骨組織を認め過誤腫と診断した.術後9年の現在,鳩胸の修復術を行ったが,再発や脊柱側弯は認めない.乳児胸壁過誤腫の報告は自験例を含めて41例と少ない.治療は呼吸困難などの症状がある場合は,肋骨を含めた腫瘍の切除が必要である.無症状の場合は術後の脊柱側弯を考慮し,切除を延期することも可能である.