1998 年 34 巻 1 号 p. 16-20
地域医療を営む小規模病院における小児外科のコストパフォーマンスについて病院経営の面から検討した.1次医療における小児外科は3次医療のそれとは異なり, 小児外科疾患のスクリーニングを含めて広い領域の診療が要求される.その地域医療の要求に小児外科医が柔軟に対応し, 小児医療を担う一員として診療にあたれば, 医療経営上も満足できるレベルに達することが可能と考えられる.さらに, 小児外科医は小児救急, 消化管の各種検査や一般的救急疾患のプライマリーケアにも慣れている医師が多く, 全体的にマンパワーが不足しがちな地域医療においては医療経営以外の面でも少なからぬ利益があると考える.小児外科医が地域医療に従事することは医療全体の中の小児外科をより広い視野で捉える良い機会となると思われる.しかし, 小児外科医が地域医療のなかで高度の専門性を維持しつつ修練を重ねるのは容易ではない.小児外科が診療科として地域に根をはり, 同時に専門性を伸ばしていくためには小児外科医育成をも考慮にいれた地域病院と教育病院間の緊密な協力体制が要求されよう.