日本小児外科学会雑誌
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小児のリンパ管腫に対するブレオマイシン局注療法 : 治療成績と副作用について
古田 靖彦大津 一弘桧田 泰
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1998 年 34 巻 2 号 p. 284-293

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抄録

小児のリンパ管腫に対する治療法として, ブレオマイシンによる硬化療法の有効性と安全性を検討した.1979年より1996年末までの自験例99例のうち, ブレオマイシン局注療法を施行した46例を対象とした.われわれの局注療法の要点は, 1) 水溶性のブレオマイシンを生理食塩水に溶解し1 mg/mlとして用いる.2) 穿刺吸引した後, ほぼ同量の溶解液を注入する.3) 1回1 mg/kg以内, 週2回, 2週連続で1コースとする.治療成績は判定し得た45例中44例(97.8%)が有効(50%以上の縮小)であった.そのうち27例(60%)は完全消失した.リンバ管腫の病型は嚢胞状22例, 混在型(嚢胞状+海綿状)17例, 海綿状7例, 全身性1例であった.嚢胞状22例は全例完全消失した.無効であったのは腋窩の硬い海綿状の1例だけであった.副作用はほとんど認めず, わずかに乳児3例に37℃台の発熱がみられたのみである.ブレオマイシン局注療法において唯一懸念される点は, 肺線維症の発現であるが, これはブレオマイシンの血中濃度と密接な関係があることが知られている.そこでわれわれの方法での安全性を知る上で, 新生児から13歳までの13例についてブレオマイシンの血中濃度を経時的に測定した.その結果, 初回投与群でも, 2∿3日後の2回目投与群においてもピークは1.2μg/ml以下であり, 投与1∿2時間後には速やかに減衰した.この結果からもわれわれの方法に従って投与すれば肺線維症の発現の可能性は少なく, 安全で有効な方法といえる.

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