日本小児外科学会雑誌
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小児脳死肝移植の問題点と長期予後
山中 潤一Stephen LynchRussell StrongTat H. OngPraga PillayGlenda Balderson関 保二山中 若樹豊坂 昭弘岡本 英三
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1998 年 34 巻 7 号 p. 1145-1151

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抄録

Queensland Liver Transplant Service (QLTS)では, 1985年から1995年までに, 生後4カ月から14.6歳(平均1.8歳)の小児重症肝疾患153例に対し176回の肝移植を施行した.肝グラフトには, 38%の症例に全肝, 61%に部分肝を用いた.レシピエントの1年, 5年, 10年生存率は82%, 75%, 70%で, 術後1年以上生存している115例のうち97%に正常肝機能を認めた.死亡した37症例の死因では, 敗血症またはDICが約半数と最多を占めた.術後急性門脈塞栓症は全症例の8%(部分肝グラフト症例の10%, 全肝グラフト症例の4%)に発生したが, うち10例で血栓除去術を試み, 6例に門脈血流再開, 長期開存を得た.急性肝動脈塞栓症は全体の7%(部分肝グラフト症例の6%, 全肝グラフト症例の9%)におこり, うち3例で血栓除去を試みたが, いずれの症例も動脈血流再開には至らなかった.胆管系合併症は16%(部分肝グラフト症例の19%, 全肝グラフト症例の10%)にみられた.移植術前に肝門部腸吻合術を受けた症例の15%に術後消化管穿孔が発生したが, 開腹術の既往がない例では術後穿孔を認めなかった.急性拒絶は43%, 慢性拒絶は5%にみられ, 後者のうち88%に再移植を施行した.CMV diseaseは16%にみられ, うち73%はganciclovirにより治癒した.小児における脳死ドナーからの肝移植は, 手術手技, 周術期管理, 免疫抑制剤の改善により, 成人における全肝移植と同様の長期予後を達成することができるようになった.

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© 1998 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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