1999 年 35 巻 5 号 p. 755-759
今回われわれは, Gross C型食道閉鎖症に合併した気管原基迷入型食道狭窄症の1例を経験した.症例は1歳の男児で, 新生児期に食道閉鎖一期的根治術の既往歴をもつ.生後10カ月ごろから嘔吐が頻回となり体重増加不良となった.食道造影と食道内視鏡検査から, 食道閉鎖症の吻合部に狭窄はなく, 下部食道に狭窄を認めた.胃・食道逆流現象(以下GER)所見も乏しいことから, 先天性食道狭窄症と診断し, 根治術を施行した.左開胸で, 触診とバルーンにより食道下部の狭窄部を確認し, 狭窄部環状切除・食道端端吻合を行った.切除標本では, 食道管腔の側方に迷入気管軟骨・気管支腺組織を認めた.術後1年6カ月, 経過良好である.C型食道閉鎖症と気管原基迷入型食道狭窄症の合併例は, これまで本邦において13例が報告されており, 本症例が14例目である.報告例の食道狭窄部切除術式については, 噴門形成術を追加する場合には開腹法が用いられ, 噴門形成術を追加しない場合には左開胸法が多くみられた.今回われわれは, 左開胸法を用いたが手術視野は良好であった.右開胸では食道閉鎖症根治術時の癒着も考えられるので, 噴門形成術を追加しない場合の左開胸法は妥当である, と考えた.