1999 年 35 巻 5 号 p. 760-765
頸部に認めたbronchogenic cyst(以下, 気管支原性嚢胞)の2例を経験した.症例1は1歳8か月の男児, 左頸部に約2cm大の腫瘤を認め, 摘出した.術中, 気管, 食道とは離れ, 病理組織学的に線毛上皮, 粘液腺, 軟骨を認め, 気管支原性嚢胞と診断した.症例2は2歳1か月の男児, 左頸部の膨隆を認め, 嚢胞状リンパ管腫を疑い, 摘出手術を施行した.術中, 気管とは容易に剥離できたが, 病理組織学的に嚢胞壁を裏打ちする線毛上皮, 軟骨, 腺組織を認め, 気管支原性嚢胞と診断した.気管支原性嚢胞は前腸由来の副肺芽が形成されることが原因と考えられており, 主に中縦隔に発生するが, 気管, 気管支と離れて存在することがある.術前の画像検査による診断は困難なことがあり, 頸部嚢胞性疾患の中でまれではあるが, 本疾患を考慮することが必要である.