日本小児外科学会雑誌
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血性腹水症状を呈した, 巨大大網嚢腫の 1 例
馬場 美子松尾 吉庸川口 竜介納谷 保子山岡 宗次梶本 吉孝吉川 真紀子嶋田 恵子伏見 博彰
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キーワード: 巨大大網嚢腫, 偽性腹水
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2000 年 36 巻 2 号 p. 342-346

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抄録

症例は, 3歳男児.生後7ヵ月頃から, 無痛性の腹部膨満があり, 増大傾向であった.各種臨床検査, 超音波検査, CT等から, 腹水の大量貯留が示唆されたが, 貯留原因となるような基礎疾患は発見されなかった.1回目の穿刺にて, 血性漿液性液体が検出され, 2回目以降の穿刺では, 液体は暗緑褐色に変色していた.腹部膨満は, 穿刺直後のみ軽減するものの, すぐに元通りの大きさに戻っていた.原因不明の腹水という診断で, 開腹したところ, 巨大大網嚢腫が発見された.内容液は1300mlあり, 組織学的には, 慢性炎症性細胞浸潤を伴ったmesothelial cystであった.大網嚢腫切除により, 本児の症状は完全に消失した.腹水様に, 腹腔内全域に液体が貯留しているにもかかわらず, 心臓, 肝臓, 腎臓に原因がなければ, 大網又は腸間膜嚢腫などの腹腔内嚢腫を考慮する必要がある.

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