日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
小児穿孔性虫垂炎における術後腹腔内膿瘍の危険因子の検討
森川 信行難波 貞夫渡辺 宏治佐藤 吉壮
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 36 巻 4 号 p. 793-799

詳細
抄録

【目的】小児期の穿孔性虫垂炎における術後腹腔内膿瘍の予防ならびに早期発見を目的として, その危険因子を検討した.【方法】穿孔性虫垂炎で術後腹腔内膿瘍を形成した6例(膿瘍(+)群)と形成しなかった31例(膿瘍(-)群)の臨床所見, 検査所見を後方視的に比較した.【結果】術前の臨床所見では下痢症状を膿瘍(+)群に有意に多く認め, 術前の検査所見では血清CRP値が膿瘍(+)群で有意に高かった.年齢, 性別, 発症から入院までの期間, 術前の体温, 白血球数は両群間に有意差を認めなかった.術後の検査所見では, 血清CRP値は両群とも同様に低下傾向を示したが, 白血球数は膿瘍(-)群で有意に低下したのに対し, 膿瘍(+)群では術前値と同様の値で推移した.術中培養の細菌の種類, 術前後に投与した抗菌薬の種類は両群間に差を認めず, 術中ドレーンは膿瘍(+)群に多く挿入されていた.【結論】術前の下痢症状, 血清CRP高値が虫垂炎術後腹腔内膿瘍の危険因子であり, 術後経過では持続的な白血球数の増多が術後膿瘍を示唆する所見であると考えられた.

著者関連情報
© 2000 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top