2000 年 36 巻 4 号 p. 793-799
【目的】小児期の穿孔性虫垂炎における術後腹腔内膿瘍の予防ならびに早期発見を目的として, その危険因子を検討した.【方法】穿孔性虫垂炎で術後腹腔内膿瘍を形成した6例(膿瘍(+)群)と形成しなかった31例(膿瘍(-)群)の臨床所見, 検査所見を後方視的に比較した.【結果】術前の臨床所見では下痢症状を膿瘍(+)群に有意に多く認め, 術前の検査所見では血清CRP値が膿瘍(+)群で有意に高かった.年齢, 性別, 発症から入院までの期間, 術前の体温, 白血球数は両群間に有意差を認めなかった.術後の検査所見では, 血清CRP値は両群とも同様に低下傾向を示したが, 白血球数は膿瘍(-)群で有意に低下したのに対し, 膿瘍(+)群では術前値と同様の値で推移した.術中培養の細菌の種類, 術前後に投与した抗菌薬の種類は両群間に差を認めず, 術中ドレーンは膿瘍(+)群に多く挿入されていた.【結論】術前の下痢症状, 血清CRP高値が虫垂炎術後腹腔内膿瘍の危険因子であり, 術後経過では持続的な白血球数の増多が術後膿瘍を示唆する所見であると考えられた.