2000 年 36 巻 7 号 p. 1058-1066
【目的】肝芽腫においてDNA ploidy, Ki-67, p53の予後因子としての有用性につき検討した.【方法】対象は手術で切除された肝芽腫12例.DNA ploidyは, パラフィン包埋標本を用い細胞核のDNA量からDNA indexを求め3群に分類した.Ki-67, p53は, 抗Ki-67抗体, 抗p53抗体を用いて免疫染色し, 陽性細胞の割合が6%以上を陽性群, 6%未満を陰性群とした.【結果】1)DNA ploidy : (1)DNA diploid(DD)は7例(生存4例, 死亡3例), DNA aneuploid(DA)は1例(死亡), DNA heterogeneity(DH)は2例(生存1例, 死亡1例)であった.DD群と非DDの生存率に有意差は認めなかった.(2)正常肝のDNA ploidy測定でDA症例を認めた.cell sortingにより肝芽腫のDA症例と鑑別可能であった.2)Ki-67 : (1)陽性3例は全例死亡, 陰性9例は生存7例, 死亡2例で, 陽性群の生存率は有意に低値を示した(p=0.022).(2)術後肺転移を認めた5例中3例が陽性で, 認めない7例は全例陰性であった(p=0.091).3)p53 : (1)陽性4例は全例死亡, 陰性8例は生存7例, 死亡1例で, 陽性群の生存率は有意に低値を示した(p=0.002).(2)術後肺転移を認めた5例中4例が陽性で, 認めない7例は全例陰性であった(p=0.020).【結論】肝芽腫のDNA ploidy測定ではDA症例の高い悪性度が示唆された.また, cell sortingはDA症例の鑑別に有用であった.Ki-67, p53は肝芽腫の予後因子, 術後肺転移因子として有用であると考えられた.