日本小児外科学会雑誌
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腹壁破裂に対する人工膜による多期的腹壁閉鎖と術後腸管機能
今泉 了彦岩中 督新井 真理伊東 充宏川嶋 寛Kimio Matoba
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2001 年 37 巻 1 号 p. 70-75

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抄録

【目的】腹壁破裂に対しては, 著者らは腸管のmilkingや癒着剥離は行わない人工膜silo法による多期的腹壁閉鎖を採用してきた.本法の有用性につき, 腸管機能の回復情況を中心に検討した.【方法】1983年4月から2000年3月の間に入院した腹壁破裂26例を対象とした.一期的腹壁閉鎖4例, silo法による多期的閉鎖22例について, 診療録から人工換気療法, 哺乳開始日, 哺乳全量摂取日, 退院前の体重増加, 在院日数, 合併症などを閉鎖法別に検討した.【結果】人工換気療法は, 一期的閉鎖群の2例, silo縫着後の3例に行った.術前からの胎便吸引症候群, アシドーシスに対してであり, 閉鎖後の腹圧上昇, 呼吸障害に対するものではなかった.人工膜縫着期間は平均9.7日であった.哺乳開始日, 哺乳全量摂取日の平均は一期的閉鎖群で各7.7日, 12.7日, 多期的閉鎖群で各16日, 22.5日であった.在院期間は一期的閉鎖30.6日, 多期的閉鎖38.7日であった.報告例に比べて早期から哺乳が可能であり, 在院期間もはるかに短かった.体重の増加は両群とも正常範囲内で差はなかった.腸管機能の回復は, 閉鎖法よりも脱出腸管の炎症, 循環障害の差によると思われた.【結論】腹壁破裂では一期的閉鎖が理想である.しかし脱出腸管の浮腫, 癒着が強い場合, 一期的閉鎖は術後の呼吸障害のほか腸管の炎症, 循環障害を悪化させ腸管機能の回復を妨げる可能性がある.愛護的な多期的手術も, 術後合併症が少なく腸管機能の回復にも優れていることより, 有用な治療法として考慮されるべきものと考えられた.

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