日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
門脈圧亢進に伴う脾機能亢進症に対する部分的脾動脈塞栓術の効果 : 血小板数の長期的推移に関する検討
仁尾 正記佐野 信行石井 智浩佐々木 英之木村 大林 富大井 龍司
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 39 巻 2 号 p. 181-186

詳細
抄録

【目的】部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization, PSE)の長期的な役割を評価するために,当科におけるPSE施行例のPSE後の臨床経過,血小板の推移を検討した.【対象と方法】当教室で,門脈圧亢進症に合併する脾機能亢進症で,持続的に進行する脾腫・血小板減少を示し,さらに臨床的出血傾向が明らかな場合という適応条件をすべて満たしたPSE施行例は36例で,のべ41回のPSEが施行された.その内訳は男性20例,女性16例,PSE施行時の年齢は1歳3か月から22歳(平均7.9歳).PSE後の観察期間は20日から15年2か月(平均5.9年)であった.原疾患は,32例が胆道閉鎖症術後症例,3例が肝外門脈閉塞症例,他の1例が肝炎後性肝硬変症例であった.各症例のPSE前後の経過から血小板減少再発に関連する因子について検討した.なお血小板数10万未満になった時点をもって血小板減少再発と定義した.【結果】血小板減少再発例11例(再発群)と非再発例25例(非再発群)の最終的な血小板数の平均値はそれぞれ75,200/mm^3および180,000/mm^3であった.再発群と非再発群についてPSE後の観察期間,脾梗塞率,初回PSE前の血小板数を比較したが,いずれにも有意差はみられなかった.PSE後の血小板ピーク値は,再発群275,600/mm^3,非再発群453,100/mm^3と,再発群で有意に低値を示した(p=0.0091).PSE後,死亡または肝移植が行われた例は計11例(死亡例5例,肝移植例6例)で,死亡原因や肝移植の主な適応理由が脾機能亢進であった例はなかった.血小板減少が再発した11例のうち10例が初回PSE後5年以内の再発であった.PSE後肝移植なし生存例24例中,血小板減少再発症例は7例(29.2%)であった.【結論】PSE後症例の約7割で長期間の有効性が期待できる一方,早期に血小板減少の再発をきたす例では再度のPSEでも長期間の効果が期待できない可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2003 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top