2003 年 39 巻 4 号 p. 630-635
症例は1歳3ヵ月の男児.発熱・嚥下困難を主訴に近医を受診し,胸部X線で食道異物を指摘された.直達鏡机下にボタン型リチウム電池を摘出したが,異物誤飲から12日間経過しており,左頚部食道に潰傷形成を認めた,さらに,食道造影にて食道気管瘻が認められたため、当科へ転院となった.異物摘出後2週に施行した食道内視鏡では,食道人口部より3cmの部位に径1mm大の瘻孔を認めた.中心静脈栄養および胃瘻による栄養管理,XIII因子製剤投与等で保存的治療を行ったところ,摘出後5週で瘻孔の自然閉鎖が確認され,経口摂取を開始した.リチウム電池食道異物は短時間でも重篤な合併症をきたしうるため,早期摘出および慎重な経過観察が必要である.食道気管瘻の形成を認めた場合,自然閉鎖を期待して,異物摘出後1〜2ヵ月間は保存的治療に努めることが望ましいと思われる.