2004 年 40 巻 2 号 p. 198-202
症例は,4歳,女児.乳児痔瘻や肛門周囲膿瘍の既往はなく,5カ月時に初めて肛門の6時方向に存在する小瘻孔に気付かれ,肛門管重複症の診断で外来経過観察されていた.特に感染徴候や分泌物の出現などの異常所見はなく,精査のために4歳時に撮影したMRにて瘻孔に続く嚢胞性病変が発見され,嚢胞を含めた瘻孔摘出術を施行した.本疾患は胎生期の背側総排泄腔の遺残が原因とされるが,本邦での報告は検索し得た限り自験例を含めて23例であった.20例が女児で,乳幼児期早期に発見される例が多かった.肛門周囲膿瘍や仙骨前にできる他の腫瘍性病変との鑑別が重要で,また合併奇形としてCurrarino症候群や肛門狭窄などが報告されている.