2004 年 40 巻 7 号 p. 901-904
単純性小腸潰瘍は稀な疾患であり,原因不明の難治性・易再発性の経過をたどる慢性炎症性腸疾患である.今回我々はメッケル憩室の肛側回腸穿孔にて発症した単純性小腸潰瘍の1例を経験したので報告する.症例は9歳の女児,右下腹部痛,発熱を主訴に来院,右下腹部の強い圧痛と筋性防御を認めたため,急性虫垂炎による穿孔性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した.虫垂および術中明らかとなったメッケル憩室には異常を認めず,回盲部より25cm口側回腸腸間膜付着側に穿孔を認めた.回腸部分切除,憩室切除および虫垂切除を施行した.組織学的には非特異的炎症像を示す潰瘍穿孔であり,単純性小腸潰瘍と診断された.メッケル憩室には異所性膵組織を認めたが炎症所見は軽度であり,回腸穿孔との関連性は否定的であった.術後経過は良好で,2年経過した現在再発は認めていない.