日本小児外科学会雑誌
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学童期に発症した腸重積症の検討
池田 太郎越永 從道細田 利史井上 幹也後藤 博志杉藤 公信萩原 紀嗣富田 凉一
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キーワード: 腸重積症, 学童期, 小児
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2005 年 41 巻 2 号 p. 177-182

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抄録

【目的】学童期における腸重積症は比較的まれであり, これらについての報告例は少ない.今回, 学童期の腸重積症について当院での過去の症例からその特徴について乳幼児の腸重積症を対象にして検討したので報告する.【方法】平成5年1月から平成15年12月までの11年間に日本大学板橋病院小児外科で入院治療を行った腸重積症143例中, 学童期に発症した8例を対象として検討を行った.【結果】症例は8∿15歳(平均11.6歳)で, 男5例, 女3例であった.既往歴には1例が10年前に腸重積症の手術歴を認めた.症状は腹痛が最も多い8例(100%)で, 血便が2例(25%), 嘔吐が2例(25%)であった.腹痛は間歇的なことが多く, 部位としては臍周囲が5例, 右下腹部が2例であった.診断は6例が腹部超音波検査で, 2例が注腸造影で診断された.治療としては, 非観血的整復術が4例で, 観血的整復術(Hutchinson手技)が4例であった.観血的整復術を施行した4例中2例にメッケル憩室を認め, 小腸部分切除を行った.そのうちの1例はメッケル憩室が先進部であり, 腸重積の原因と考えられたが, 他の1例は先進部ではなく偶発症と考えられた.また, その他の症例においては明らかな器質的な疾患を認めなかった.重積形式については回腸-結腸型が5例, 回腸-回腸-結腸型が2例, 回腸-回腸型が1例であった.再発については8例中2例に認めた.1例は生後6カ月時に腸重積と診断され観血的整復術を施行され10年後に再発した症例で, 非観血的整復術で治療され, 以降は再発を認めていない.他の1例は人院中に2度再発を認めたが, いずれも非観血的に整復され, メッケルシンチや大腸内視鏡を行ったが異常を認めず, その後は再発を認めていない.【結論】学童期における腸重積症の報告は少なく, 一般的には器質的な疾患を原因として発症することが多いとされている.今回の検討では器質的な疾患が原因となり発症したのはメッケル憩室の1例(12.5%)のみであり, 他の7例については明らかな原因はなく, いわゆる特発性と考えられた.しかし, 同時期の当院における学童期以前発症腸重積の器質的原因を認めた頻度は0.72%であり, その頻度からは学童期以前に発症した腸重積に比較すると多いと考えられた.また, 症状では腹痛が最も多く, 下血に至る症例は少なく, 虫垂炎との鑑別診断を要すると考えられた.

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