過去12年間に経験した小児精巣yolk sac tumor(以下本症)6例を報告する.年齢は4カ月から2歳3カ月(平均1歳3カ月).主訴は全て陰嚢腫大で2例に陰嚢水腫を伴っていた.患側は右側4例, 左側2例であった.手術は全例に高位精巣摘除術のみを行った.臨床病期はStage Iが4例, Stage III 0が1例, Stage IIIBが1例であった.経過観察期間は1年から9年(平均4.8年)で全例生存中である.Stage I術後再発, Stage III 0, Stage IIIBの3例に術後化学療法を行った.本症Stage Iの予後は良好とされているが, 再発・転移の可能性を念頭に置いた厳重な術後経過観察が必要であり, 特に病理組織学的に脈管浸潤を認めるものは注意が必要である.再発の指標には血清AFP値の推移が有用である.また, 再発・進行例に対しては白金製剤を中心とした積極的な多剤併用化学療法が有用である.